(和訳)福島原発事故-簡素にて正確な説明-

ブログ主註:
本文献は、訳を開始した当初から論調が大幅に変容しています。重要な意味を持つ数字が2倍以上(崩壊熱初期値当初3%が7%に書き換えられるなど)変更されている部分、福島原発の構造把握のミスもあり、技術的資料としての信頼性に少なからぬ疑問があることを表明しておきます。上記踏まえ(修正が正しい方向に行われたことは間違いないようです)、下記ペーパーをお読みください。
今や、このペーパーは「安心するため」ではなく「知るため」を目的にしていると考えてよい。
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本文献は「Fukushima Nuclear Accident – a simple and accurate explanation」を私が和訳したものです。現在報道は種々為されており、様々な解説が為されてはいますが、どれも中途半端もしくは断片的、もしくは間違いが多く感じます。正しい「技術的」把握無しに対策はできませんし、無知は恐怖やヒステリー・パニックの母ですから、私たちによる正しい理解が必要と考え、和訳に至りました。
僕は技術者を本職としていますが原発の専門家ではありません。訳は情報の歪曲が起きない範囲内で直訳を避け、例えば放射性の物質のことを放射能と記述するなどあえて皆が飲み込みやすい表現に変えてあります。左記踏まえまずい部分があればご指摘を賜りたいと思います。
ーーーThis is Version2.1 at 2011 03 16 21:11
IAEAWNNの信頼できる情報源によると福島第一・第二原発の事故に関して、技術的誤解や誇張を含む誤情報がうんざりするほどインターネットやツイッター上で流されています。BNCの「福島原発事故に関する掲示板」では通常の書き込みに混じって有用な技術的情報がアップロードされています。ただ、一般の人が理解できうる情報はあまりありません…なぜ、どうしてこんな事が起きたのか、また、引き続いて何が起きようとしているのか…。

以下、独の原子力開発に関する深い知見を持つ、MITボストンのJosef Oehmen教授による説明を紹介します。以下の情報は、事故の理解に関してとても重要なものです。

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さて、今何が起きているのかを理解するために、ちょっと基礎を学んでおきましょう。

福島第一原発は、沸騰水型軽水炉、略してBWRなどと呼ばれる形式です。BWRは例えるならば圧力鍋のようなものです。原子炉燃料の連鎖反応により生じる熱により軽水…ただの水…を蒸発させ、高圧の蒸気としてこれでタービンを回して電気を発生します。蒸気は冷やされて水に戻り、再度炉に送られて蒸気にされる、というサイクルを繰り返しています。炉の温度はだいたい285℃です。

核燃料はウランの酸化物(錆のようなもの)でできています。ウラン酸化物は2400℃にならないと融解しないセラミックです。これが1センチくらいの厚さのペレット状に固められ、ジルカロイ合金という1200℃にまで耐える金属のさやに積み重ねられて封入されています。これを燃料棒といいます。燃料棒は複数本まとめられて炉の中心部に配置します。この部分を炉心といいます。

ジルカロイ合金のさやは、1番目の隔壁・遮蔽体で、放射源を外界と隔てています。

炉心部は「圧力容器」の中に納められています。この容器は先のたとえの圧力鍋にあたります。これが第2の隔壁でポットのような形状をしており、極めて頑丈な設計で、数百度になる炉心を安全に保持するようにできています。
さらに原子炉全体…炉本体・配管類・水プールなどが第3の隔壁の中に入れられています。これは、鋼鉄でできた極めて頑丈な気密構造で、完全な炉心溶融が起きたとしてもこれを保持できるだけの構造を持っており、このために圧力容器の下には分厚いコンクリートが敷かれています。もし炉心溶融が起きて圧力容器が爆発し最終的に溶解してしまっても、ここで燃料が地面に落ちることを食い止めます。

この第3の隔壁はさらに、原子炉建屋に覆われています。今回の(水素)爆発ではこの部分が吹き飛ばされました。(詳細は後述)

原子炉反応の基礎

ウラニウムは崩壊してより小さな原子に分裂します。このとき、中性子を放出します。1つのウラン原子が崩壊すると2つ程度の中性子が出てきます。この中性子がまた別のウラン原子に衝突すると、同様に崩壊してまた中性子を出します。これを核連鎖反応といいます。

原子炉にある燃料棒の集合体は、そのままにしておくとこの核反応による発熱により45分で溶けてしまいます。ただし、この場合でも原爆のように原子炉が爆発することはあり得ません。

核反応を制御するため、制御棒というものを使用します。制御棒は中性子を吸収する素材でできており、即座に核反応を停止させます。通常は制御棒は炉心から抜かれており、核反応の熱により水が蒸気に変えられ、その熱を奪いタービンを回しています。生成する熱量と同じだけの水蒸気が生成され、炉はおよそ285℃を保って十分安定に運転されます。

問題は制御棒が炉に挿入された後です。炉心は未だ「崩壊熱」を持っています。ウランは連鎖反応を止めますが、ウランが崩壊してできた中間生成物…セシウムヨウ素同位体は不安定なため、さらに核分裂を起こして放射性のない最終生成物に変化しています。これらが未だ燃料棒にあって熱を生成します。ウランは制御棒があるために既に反応を止めて発熱しませんが、中間生成物質が崩壊しきってしまう数日間熱を出します。

この崩壊熱が今問題となっています。

ウランが崩壊してできたこの中間生成物(セシウムヨウ素)は、ウランと同じく燃料棒の中に入っています。

2次的な放射性物質が燃料棒の外でも生じ得ます。ただこれらの生成物は通常極めて短い半減期を持っているので、すぐに崩壊して放射性を持たない物質へ変化します。ですから、これら燃料棒の外にある放射物質が外界に漏れてもたいした問題にはなりません。うーんと考えている間にあっという間にこれらの物質は崩壊して放射性を失うからです。これは空気中の窒素の同位体のN16や、キセノンのような希ガスです。ウランから発生した中性子の多くは、連鎖反応に使用されますが、いくらかは燃料棒の周囲にある水や水中の空気の原子に吸収されます。このようにして、非放射性の物質が中性子を受け取ると放射性に変化します。ただこれらの物質は前述のように速やかに中性子を放出して非放射性に戻ります。

この「2次型」の放射は、環境への放射能の放出に関して議論する際に重要です(後述)。

福島で起きていること

核心に関して説明に入ります。今回の震災では、今まで原発が受けたことのあるエネルギーの16倍が原子力プラントに襲いかかりました。
M9.0の地震が起こったとき、全ての原子炉は非常停止しました。数秒後に制御棒が炉心に挿入され、ウランの連鎖反応は停止しました。しかしまだ、崩壊熱があり、それを冷却せねば成りません。ただ、崩壊熱の量は通常運転時の7%くらいです。
震災で原子炉の電源系統が破壊されました。これは原発にとって深刻な事態で、「プラントブラックアウト」と呼ばれます。原発で起きる停電は様々なバックアップシステムが備えられてはいます。冷却を行うために電力が必須です。しかし炉自体が非常停止したので、もう自力での電力は望めません。
1時間ほどはうまく事が運びました。複数のディーゼル発電機の1つが起動し、電力を供給しました。が、想定外の規模の津波がやってきてディーゼル発電機の全てを破壊し去りました。
原子力発電所を設計するとき、技術者は多重防御という考え方に基づきます。考えられ得る最悪の事故を想定し、それに耐えうるようにシステムを設計します。さらに、想定を超える事象が起きたとしても原発を制御できるだけの方策を残すように設計します。想定外の事象とは…津波により全ディーゼル発電機が失われる…ようなことです。最後の砦は問題を起こした炉心を三番目の隔壁(圧力容器の外にある鋼鉄とコンクリートの構造体)の中に封じ込めることで、制御棒による制御の有無や、炉心の溶融の有無を問わず最終的に問題をここで食い止めます。
ディーゼル発電機が流れてしまったので、原子炉操作員は電力を緊急バッテリーに切り替えました。このバッテリーはバックアップのそのまたバックアップのなかの1つで、炉心を8時間は冷やし続けることができるように設計されています。これはうまく動作し、その間に可搬型(移動可能な)ディーゼル発電機が用意できました。
しかし事は本格的に悪い方向へ流れはじめます。この外部ディーゼル発電機は原子力プラントに接続できませんでした。そのためバッテリーが上がってしまったあとは、崩壊熱の冷却が困難になりました。
原子炉操作員は緊急時マニュアルの「冷却系統が失われた場合」の指示に従います。これも先に書いた多重防御の考え方によるものです。冷却が失われたことを受けて、防御ラインを一歩後退させます。これはとんでも無いことのように感じられますが、原子炉オペレータは炉心溶融時の操作訓練を日々受けているためそれを冷静に遂行できます。
事態ここに至り、炉心溶融の危険性が語られはじめました。その日のうちに冷却が行われない場合、その日の最後の数時間の間に炉心が溶けてしまう危険がでてきました。そうなると防御線は最終ラインの格納容器にまで後退してしまうこととなります。
このときするべき事はこうです。先ず炉の温度が上がらないようにすること、放射性燃料をジルカロイのさやに留め、また圧力容器の中から出さないようにすることです。時間を稼げれば、その間に炉の冷却装置を修理できましょう。
炉心の冷却は面倒なことで、そのため原子炉は複数の冷却システム-原子炉冷却水浄化システム、炉心熱除去装置、炉心隔離冷却装置、液冷システム、緊急炉心冷却システム-がありますが、この時点ではどの冷却手段が正常だったのかはわかっていません。
ストーブ上に置いた圧力鍋を想像します。火は小さいですが点いてはいます。原子炉オペレータはできうる限りの方策を使って温度を下げようとしますが、温度は上がり、共に圧力も上がり出しました。この時点では、燃料棒の温度を1200℃以下に保ち、第1の隔壁から燃料を出さないこと、また第2の隔壁である圧力鍋…圧力容器を破損させず保つために圧力を制御することです。圧力鍋の圧が高くなりすぎるととても危険なため、緊急時用の弁(圧力解放バルブ:ベント)を開き圧力を制御します。このため弁(ベント)は時々解放されて蒸気を逃がしはじめました。
炉内のガスを逃がすことは環境へ放射性物質を暴露することを意味しますが、この暴露はフィルタ等を通る等して制御された少ない量のものです。このガスは少量の放射能を持ちますが、現場の作業者にも無害な程度のもので、危険性はあまりありません。放出の是非は、放出をしない場合の原子炉の崩壊と放出をした場合のリスクを比較して判断されました。

ここでやっと移動式の発電機が搬入されいくらかの電力を供給しはじめました。しかし、放出によって失われた水蒸気は、加水された量よりも少ないため、冷却能力は徐々に失われはじめました。そして放出している間に、燃料棒の上端よりも水位が下がり出し、(冷却が失われたことで)燃料棒の温度が1200℃を超え、さやのジルカロイ合金と水蒸気と反応をはじめました。この反応で水素が生じ、水蒸気に混じってベント作業により放出されました。
この反応が起きることは予測可能なものではありましたが、どのくらいの量の水素が発生したのかに関して、原子炉オペレータは燃料棒の温度や炉内の水位が正確にわからなかったため、推定できませんでした。水素ガスは容易に空気中の酸素と反応して燃焼します。十分な量の水素があれば爆発的に燃焼します。格納容器の中にも水素がある状態でしたが、空気(酸素)がないため燃焼できません。ベントにより外部にこのガスが放出されることにより爆発を起こしました。爆発は特に封じ込め手段を施していない格納容器と建屋の間で起きています。同様の爆発は3号炉でも起きています。この爆発で建屋外壁が破壊されましたが、圧力容器とその外側の格納容器に損傷はありませんでした。この爆発は不測のものでしたが、格納容器の外で起きたもので格納容器の安全性は保たれました。
1200℃を超え、燃料棒の中には損傷を起こしはじめたものもありました。核燃料自体に問題はありませんでしたが、さや(格納体)のジルカロイ合金は損傷を起こしはじめました。この時点で蒸気や冷却水には核生成物(セシウムヨウ素)が混じりはじめ、環境に少量のセシウムヨウ素が検出されはじめたという報告が始まっています。
セシウムヨウ素・アルゴンなどのアイソトープは、かなり長い半減期を持ち、長期にわたり放射源となり危険です)
真水が不足していたこと、また冷却のための電力が足りなかったことで、技術者たちはホウ酸を海水に混ぜたものを注水しようと決めました。炉は停止してはいましたが、ホウ酸を注入すればより確実に停止状態を保てます。ホウ酸水はヨウ素を蒸散させにくくする作用もありますが、これは添加の主目的ではありません。
通常の冷却システムで用いられる水は、浄化されておりミネラル類(金属酸化物など)を含まないものです。これはシステムの腐食(錆)を抑えるためです。海水を注入すれば、事後の処理が厄介にはなりますが、とにかく冷却は達成されました。
この処理により燃料棒はダメージを受けないレベルにまで冷やされました。炉の緊急停止後、十分な時間が経過しているため崩壊熱はこの時点ではわずかとなり、格納容器内の圧力は安定するに至りました。

UPDATE – 3/14 8:15 pm EST***

1号機と3号機は東電のプレスリリースによると安定な状態になっていますが、燃料棒の損傷がどの程度なのかは不明です。このとき(3/14 2:30AM)、福島原発付近の放射線レベルは231シーベルトに落ちていました。

UPDATE – 3/14 10:55 pm EST***

2号炉に何が起きているのかは、まだよくわかりません。放射レベルは上がっています。最新の情報を待ちたいと思います。